こうした考えを受けて、1950 年、学者、芸術家、実業家たちが日常の煩雑さから解放され、ゆっくりと語りあい、思索するための理想的な「場」を提供することを目的として、アスペン研究所が設立されました。また翌年には「アスペン・エグゼクティブ・セミナー」がスタートしました。
このセミナーでは、アドラー自身が編纂にあたった西欧の名著全集『グレートブックス』から、数百ページにおよぶ古典抜粋集を基本テキストとして使用するプログラムを導入しました。アドラーのプログラムは、時の試練に耐えた古典名著を共通のテキストとして、「過去の人々は何に価値を見出し、どう生きたのかを考え、そこからわれわれは何を基準に、どう行動するのか」などを対話によるコミュニケーションを通じて、各自の答えを見つけ出していこうとするものでした。
ハッチンスの提起した問題意識と、アドラーの開発したメソッドを基本としたユニークなセミナーを中核として、現在では政治・経済・外交などの分野における政策志向型の「ポリシー・プログラム」、カレントな課題をテーマとする「トピカル・セミナー」、海外のアスペン研究所との連携による諸活動など、アスペンの活動領域は大きく広がっています。