アスペン精神は哲学的な考察について対話を重ねるということです。ソクラテスは哲学について「哲学は魂の世話だ」と分かりやすく定義しています。現代人はひとりの教養人として常識的な哲学を学んでおかないと、自分の魂の世話をできなくなります。
魂の世話の方法論は、哲学的な古典を読み、そこから問題を引き出し、感じたことを述べ合う方法で他者と対話を始めることが有効です。対話とは、人ときちんと向き合って、共通した問題を語り合うことです。
アスペン・セミナーで使われる古典の著者は大変な学者や詩人や政治家ですから、そういう人たちの知識を土台にして、私たちが少しずつ自分を高めていき、一歩ずつでも真理に近づくことができるのではないかと思います。
一見、遠回りに見えますが、これは未来を考えるうえで必要なことです。なぜなら、人間が偏った儲け主義や国家主義、会社主義とか利己主義や帰属集団主義などに振り回されずに、人類の立場に立っていい未来をつくり上げていくよりよい学問や、よりよい事業を創造していくことにつながる規範と理念を、古典は教えてくれるからです。古典は人類の宝物ですから、セミナーでの対話を通して、それを内的に学び、そして新しい時代に、新しい未来を切り拓いていくという謙虚であると同時に挑戦的な営みができるのではないかと思います。(今道先生は、2012年10月13日にお亡くなりになりました。)